日米の慣習差
内容は同じでも、書き方や言い方が日本と米国で違うところです。日米の両側を資料で確かめた項目だけを載せています。
記法
- 近似の記号 英語の答案では ≈ を使う。読みは is approximately(is approximately equal to とも言う)。
- 弧の大きさ CK-12 Geometry は「円周角は intercepted arc の半分」と弧の度数で言う(IM Geometry は中心角の半分と言うが、弧にも度数を持たせる)。弧の度数は m を付けて書く。
- ₙCᵣ と C(n, r) C(n, r) と (n r) は nCr と同じ。(n r) は n choose r と読む。
- 補集合・余事象の記号 OpenStax(Precalculus・Introductory Statistics)の E′・A′ は余事象(the complement of …)。AP Statistics の CED は E′・Ē・E^C のどれも挙げるので、上線の Ā もそのまま使える。
- 条件付き確率の書き方 答案では P(B | A) と書く(OpenStax Introductory Statistics と AP Statistics の CED の書き方)。英語版 Wikipedia「Conditional probability」は添字の P_B(A) を「ときに使う」書き方として挙げる。
- 合同の ≡ と ≅ 図形の合同は ≅ を使う。≡ は CK-12 Geometry(2.10 Negative Statements)と Levin では論理の同値や整数の合同式の記号になる。
- 判別式の D 答案では D と置かずに b² − 4ac > 0 と書くか、the discriminant is positive と書く。D を使うなら、OpenStax Calculus が the discriminant D = 4AC − B² と書くように、Let D = b² − 4ac. と先に定義する。
- 「存在しない」と DNE 英語では does not exist と書くか DNE と略す(OpenStax Precalculus の練習問題は「write DNE」と答え方を指示する)。AP の CED の例は略さずに does not exist と書く。
- 図形と大きさの書き分け 大きさの等しさは m∠A = m∠B か ∠A ≅ ∠B と書く。線分・直線・半直線は記号の上の印で書き分ける。
- ガウス記号と床関数 英語で [x] を使うなら、OpenStax Calculus Volume 2 のように the greatest integer less than or equal to x と断る。記号で書くなら ⌊x⌋ にし(OpenStax Calculus Volume 1 の floor function)、the floor of x と読む。
- 不等式の領域の境界 英語のグラフでは、境界を含まない(< >)ときは dashed line、含む(≤ ≥)ときは solid line で描く(OpenStax Elementary Algebra 4.7、IM Algebra 1 2.21)。共通テストのように実線で描いて「含まない」と言葉で添えるだけにしない。
- ≦ と ≤ 答案では ≤ ≥ を使う(OpenStax・CED と同じ)。
- 区間の書き方 OpenStax Elementary Algebra(2.7)のように in interval notation と指示されたら、解を (2, 3]・[1, ∞) の形で答える。[ ] は端を含み、( ) は含まない。
- 直線の方程式の一般形 OpenStax(Elementary Algebra 4.1、Algebra and Trigonometry 2.2)と IM(Algebra 1 2.10)の standard form は Ax + By = C(定数が右辺)。ax + by + c = 0 から書き直すときは定数を右辺に移す(2x − 3y + 12 = 0 は 2x − 3y = −12)。
- log と ln OpenStax の教科書では、底を書かない log x は底 10(常用対数)。自然対数は ln x と書く。
- 否定と「かつ」「または」の書き方 p̄ は CK-12 Geometry では ~p、Levin では ¬P と書き、not p と読む。「かつ」「または」は and・or か ∧・∨。
- 平行移動の書き方 CK-12 Geometry(Write the mapping rule)・IM Geometry(coordinate rule)の図形の移動の問題では (x, y) → (x + a, y + b) の式で書く。関数のグラフの平行移動は、OpenStax Algebra and Trigonometry(3.5)の shifted 2 units to the right のように向きと量を言葉で言う。
- マイナスと negative 負の数 −3 は negative three と読む。minus は引き算の読み(−3 を minus three と読む講義もある)。
- 正規分布の 2 つ目の値 N(0, 4) の 4 が分散か標準偏差かを必ず確かめる。
- 正規分布表の形 表を使うときは、0 から z までの面積か z より左の面積かを確かめる(z が正なら、左の面積は 0 から z までの面積に 0.5 を足した値)。
- 片側極限の書き方 答案では x → a⁺・x → a⁻ と書き(OpenStax Calculus Volume 1 の書き方)、x approaches a from the right / from the left と読む。
- 積事象・和事象の書き方 高校の IM Geometry は P(A and B)・P(A or B)、大学の入門統計の OpenStax Introductory Statistics は P(A AND B)・P(A OR B) と書き、どちらも P(A∩B)・P(A∪B) と同じ。AP Statistics の CED と OpenStax Precalculus は日本と同じ ∩・∪ で書く。授業の教科書がどちらで書くかを確かめる。
- 象限の番号 「第 2 象限」は OpenStax では Quadrant II と書き、CK-12 Geometry もローマ数字で番号を付ける(IM は quadrant 2)。
- sec・csc・cot sec・csc・cot は 1/cos・1/sin・1/tan。OpenStax の教科書と AP Calculus の CED(topic 2.10)はそのまま式に使う。
- 重複組合せの記号 英語で書くときは ₙHᵣ を使わず、二項係数 (n+r−1 choose r) に直す(Levin 3.5)。
- 数列の最初の番号 a₀ から始まる数列では、第 n 項が aₙ₋₁ になる。番号の始まりを確かめる。
- 相似の ∽ と ∼ 答案では ∼(チルダの形)を使う。∽ は米国の参照(CED・OpenStax・IM・CK-12・Levin・Nicholson)に出てこない。
- y = ax + b と y = mx + b 傾きは m と書く。式の「形」に名前があるので、slope-intercept form(y = mx + b)・point-slope form・standard form(Ax + By = C)を覚えておくと指示が読める。
- 部分集合の記号 ⊆ と ⊂ を書き分ける本では、⊂ は等しい場合を含まない。
使う文字
- 底面積の文字 IM の公式の大文字 B は底面積(area of the base)、小文字の b は三角形の底辺の長さ(A = ½bh、Grade 6 1.9)。
- 直線の式の a と b 統計の本の ŷ = a + bx では a が切片、b が傾きで、y = ax + b と役割が逆になる(電卓の出力の y = ax + b は a が傾き)。どちらが傾きかを式の形で確かめる。
- 置換積分の文字 OpenStax Calculus と AP Calculus の CED(Unit 6 の概要)は置換積分を u-substitution と呼び、新しい変数に u を使う(Let u = x² + 1.)。x = a sin θ の置き換えは、OpenStax Calculus Volume 2 では trigonometric substitution(話し言葉では trig substitution)という別の技法になる。
- 全体集合と標本空間の文字 英語の確率の教科書(OpenStax Precalculus・Introductory Statistics)が S と書いたら、数A の全事象 U と同じもの(sample space)。集合の全体は英語でも U(Levin の 𝒰)でよいが、呼び方は universal set より universe(the universe 𝒰)。
- 頂点の文字 OpenStax Algebra and Trigonometry と IM は、放物線の頂点も円の中心も (h, k) と書く(y = a(x − h)² + k、(x − h)² + (y − k)² = r²)。頂点を (p, q)、中心を (a, b) と書くときは、何を表す文字かを言葉で添える。
用語
- 定積分で表された関数の呼び方 ∫ₐˣ f(t) dt の関数を、AP Calculus の CED は accumulation function(functions defined by integrals とも)と呼ぶ。OpenStax Calculus Volume 1 は名前を付けずに F(x) = ∫ₐˣ f(t) dt と書く。
- 原始関数と不定積分 find an antiderivative は関数を 1 つ答えればよい。the indefinite integral には + C を付ける。
- 球と sphere IM Geometry・CK-12 Geometry 9.5・OpenStax Calculus Volume 3 の定義では sphere は表面(日本語の球面)。ただし the volume of a sphere のように、中身を含む立体(日本語の球)にも sphere と言う(CK-12 Geometry 9.2 は sphere を立体と書く)。
- 一筆書きと Euler trail 始点に戻る道は Euler circuit(Euler tour とも)と言い分ける。Levin では戻らない道も含めて Euler trail(Euler path とも)。
- グラフの移動の言い方 x 軸方向に −3 は 3 units to the left のように向きの語で言う。もとの関数は parent function と呼ぶ。
- 虚数の範囲 虚数解をはっきり言うなら non-real solutions(OpenStax Precalculus の綴りは nonreal)。complex solutions も使うが、OpenStax Algebra and Trigonometry(5.5)のように実数解を含めることがある。「虚数」を imaginary number と言うと、IM Algebra 2 と OpenStax Algebra and Trigonometry の意味では bi の形の数になるので、−1 + 2i のような数は a non-real complex number と言う。
- 一次不等式の範囲 OpenStax Elementary Algebra の linear inequality は 2 変数(y ≤ 2x + 1)のこともある。数学I の x だけの連立不等式は compound inequality(and でつなぐ)、数学II の領域を表す 2 変数の不等式の組は system of linear inequalities と言う。
- 逆三角関数 sin⁻¹ x は 1/sin x ではなく逆三角関数(arcsin x)。OpenStax Algebra and Trigonometry(8.3)もそう断る。
- 日本だけが名前を付ける手法 米国の高校の資料(CED・OpenStax・IM・CK-12)には名前が出てこないので、中身を言う(rewrite a sin θ + b cos θ as a single sine function、the sum of the roots is −b/a、the set of all points such that …)。
- 「命題」と「条件」 「x に関する条件 p」は、Levin(離散数学)では predicate に当たり、P(x) と書く。高校の Geometry の if-then の文(CK-12 Geometry 2.11)では、条件にあたる部分を hypothesis(仮定)・conclusion(結論)と呼ぶ。
- 二次関数の式の形の名前 「標準形」を standard form と訳さない(IM Algebra 1 の standard form は ax² + bx + c)。a(x − p)² + q は vertex form と言う。standard form と言われたら、どの形かを式で確かめる。
- 四捨五入の位の言い方 「小数第 2 位を四捨五入」は round to the nearest tenth(1 つ上の位)。
- 分散を n で割るか n − 1 で割るか OpenStax Introductory Statistics と AP Statistics の CED では、sample variance(s²)と s は n − 1 で割る。数Ⅰの分散(n で割る)は population variance の式と同じ形。数学B の「標本の標準偏差」も n で割るので、sample standard deviation(n − 1 で割る s)とは式が違う。
- 相似比と scale factor scale factor は「元 → 像」の向きのある 1 つの数。向きを逆にすると逆数になる。
- 級数の範囲 OpenStax Algebra and Trigonometry(13.4)は有限個の項の和も series と呼び、無限の和は infinite series と言い分ける。OpenStax Calculus Volume 2(5.2 Infinite Series)は infinite series と定義した後、series だけで無限の和を指す。
- 母線と slant height slant height は線ではなく長さ。「母線の長さ」と訳す。
- 台形の定義 米国の授業で使う教材の定義を確かめる。平行四辺形が台形に入るかで答えが変わる。
- 三角形の合同条件 CK-12 Geometry は合同の理由を by SAS・by HL と略号で書き、AAS と HL を含む 5 つを合同条件として数える。IM Geometry は略号を使わず Side-Angle-Side Triangle Congruence Theorem のように名前を書き、AAS・HL の名前は出てこない。授業でどの条件を名前で使うかを確かめる。
- 米国だけが名前を付ける規則・判定法 AP の CED(Unit 5)は極値の理由を first / second derivative test を使って書く練習を挙げ、OpenStax Calculus Volume 1 の例題も By the second derivative test, … と理由に名前を書く。問題の指示も Use the power rule のように名前で出るので、名前で覚える。
- 解・共有点と zero・x-intercept zero は関数(root とも言う)、solution は方程式、x-intercept はグラフに使う。x-intercept を点 (3, 0) で答えるか値 3 で答えるかは問題文で確かめる。
証明・答案
- 証明の理由の書き方 CK-12 Geometry の証明は理由の欄に SSS・CPCTC と略号だけを書き、IM Geometry は定理の名前を書く。先生がどちらを使うかを確かめる。
- 「C は積分定数」の書き添え 英語の答案でも + C は必ず付ける(AP の CED の Unit 6 の概要は、不定積分に constant of integration を付けるよう求める)。OpenStax Calculus の例題の答えは + C で終わり、C の説明は添えない。
- 二次式の因数分解の方法 OpenStax Elementary Algebra(7.3)は trial and error と ac method を並べて教える。たすき掛けは trial and error と同じ組を探す方法なので、英語で説明するなら trial and error(IM Algebra 1 7.10 は guessing and checking)と言える。課題が ac method を指定していればその手順(bx を 2 つに分けて factor by grouping)で書く。
- ∴ と ∵ 英語の答案は結論を Therefore, … と語で書く(OpenStax・AP の CED の書き方)。∵ は米国の参照に出てこないので、理由は Since か Because で書く。
- 移動と合同・相似 合同を移動で重なることで、相似を拡大・縮小と移動で重なることで定めるのは、解説・IM Geometry・CK-12 Geometry(4.9・8.8)で同じ。違うのは三角形の合同条件の扱いで、IM Geometry は SSS・SAS・ASA を rigid transformation から証明する theorem(Side-Angle-Side Triangle Congruence Theorem など)とし、CK-12 Geometry は解説と同じく証明せずに認める postulate とする。授業で合同条件を証明するかを確かめる。
- 証明の書き方 CK-12 Geometry は証明の形を two-column proof・paragraph proof・flow diagram から選んでよいとするが、two-column proof では 1 行目の理由を Given と書く。授業でどの形を求められるかを確かめる。
- 幾何の定理・公準の名前 CK-12 Geometry の証明(Statement / Reason の表)は理由の欄に Base Angles Theorem のような定理・公準の名前を書く。名前の一覧を早めに作っておく。
計算機
教室の習慣
- 平均絶対偏差 MAD は平均値からの距離の平均。IM 6–8 は Grade 6(8.12 Using Mean and MAD to Make Comparisons)と Grade 7(8.11 Comparing Groups)で 2 つの集団の散らばりを MAD で比べる。AP Statistics の CED と OpenStax Introductory Statistics には出てこず、散らばりは標準偏差と IQR で表す。
- 偏差値 偏差値 60 は z-score 1 に当たる((60 − 50) ÷ 10)。OpenStax Introductory Statistics と AP Statistics の CED(topic 1.9)は、データの位置を z-score で比べる。
- 日本だけの内容(二重根号・階差数列) 階差数列は英語で the sequence of differences(Levin の言い方)。米国の高校の参照(CED・OpenStax・IM・CK-12)には出てこず、大学の離散数学の教科書(Levin)で出てくる。
- 日本の数学Aだけの整数の内容 互除法や不定方程式を英語で説明するときは Euclidean algorithm・linear Diophantine equation と言う。米国の高校の参照(CED・OpenStax・IM・CK-12)にはどちらも出てこないので、手順も一緒に示す。
- チェバ・メネラウスの定理 Ceva’s theorem・Menelaus’s theorem は英語版 Wikipedia に記事のある名前だが、米国の高校の参照(CED・OpenStax・IM・CK-12)には出てこない。使うときは定理の中身(三角形の辺の比の積が 1)も一緒に言う。
- ロピタルの定理 AP Calculus の CED(topic 4.7)は 0/0・∞/∞ の不定形の極限にロピタルの定理(L’Hospital’s Rule)を使ってよいとする。使う前に lim f(x) = 0、lim g(x) = 0(またはどちらも ±∞)を書いて示し、lim f(x)/g(x) = 0/0 とは書かない(CED の Unit 4 の概要)。
- 論理を教える科目 CK-12 Geometry は論理(2.4 Reasoning Types〜2.12)を証明(2.15〜)の前に置く。truth table・law of detachment・contrapositive の名前を覚えておく。
- 平方単位・立方単位 単位が与えられていなければ square units・cubic units を付けて答える。
- AP Calculus だけの内容 AP Calculus の Unit 7(微分方程式)と Unit 8 の average value(topic 8.1)は学習指導要領解説の数学III に出てこない。早めに教科書で確かめる。
- 米国の Algebra・Precalculus だけの内容 OpenStax Algebra and Trigonometry(Algebra 2・Precalculus の範囲)には学習指導要領解説に出てこない手法(Cramer's Rule・Descartes' Rule of Signs・rotation of axes)が入る(IM Algebra 2 には出てこない)。名前で検索すれば手順が分かる。